我が家の事件簿

朝から我が家が疑心暗鬼の闇に包まれた。

祖母は自分専用の座椅子を愛用している。
その座椅子の頭を置くところには、汗でカバーが汚れないようにタオルが掛けられている。
しばしば座椅子で寝ることもあり、ずれないようにタオルは安全ピンで留められていた。

今朝、大事件が起きた。
その座椅子にかけてあるタオルがなくなったのだ。

最近の祖母は耳も遠くなり、嫁姑の関係も芳しくない。
まずは嫁を疑い、息子である父親を疑い、孫である自分にも疑いをかけた。
（無論、孫に向けては「○○ちゃん、おばあちゃんのタオル知らないかえ？」といった、疑いとは程遠い優しい物腰）
しかし誰も心当たりがない。
ごく普通に考えて、人の枕カバーなるものを誰が好んで拝借するだろうか。

そんなこんなで事件は闇に葬られ（葬られた間、わずか数十時間）家族は各々の職場、学校へ向かった。

そして夕時、事件は解決した。
まさに猟奇的犯行、完全犯罪。

タオルは座椅子の上に置かれた座布団の下で冷たくなっていた・・・